
オリオン座はとにかく目立つ!
ふたつの1等星をもつオリオン座は、冬の夜空でひときわ明るい星座。
都会の夜空でもバッチリみつかります。
神話のオリオンはイケメンだけど粗暴で大の女好き。
恋人の矢で殺されて星座になりました。
オリオン座には、
- 大爆発カウントダウン中の「赤色超巨星ベテルギウス」
- 太陽の4万倍の明るさ「青色超巨星リゲル」
- まるでSF映画!幻想的な「馬頭星雲」
- 星たちが生まれる場所「オリオン大星雲」
- 肉眼でみえないけれど写真にうつる!まるで心霊写真みたいな「バーナードループ」
- 秋の風物詩「オリオン座流星群」
など、魅力的な天体がいっぱい。
このページでは、オリオン座の由来となったギリシャ神話や、オリオン座に含まれる個性豊かな天体たちを楽しく解説しています。
オリオン座の形と見つけ方〜1等星をふたつ含む
夜空には全部で88の星座がありますが、そのなかでもっとも目立っているのがオリオン座といえるでしょう。
まさに冬の星座の王者。
天の川の西岸にひときわ明るく輝いていて、みつけやすいので他の星や星座を探すときの目印にもなっています。
東京のように、あまり空気がきれいではなく明かりが多い都会の夜空でも十分にみつけることができます。
オリオン座にはひときわ明るく輝く1等星が2つあります。
ベテルギウスとリゲルという星です。
夜空には全部あわせて88の星座があるのですが、1等星は21個しかありません。
そのうちの2つが含まれているぜいたくな星座。それがオリオン座です。
いまから4000年以上も昔の古代メソポタミア文明(現在のイラクあたりにあった文明)のバビロニアでは、すでに星座として知られていたそうです。
古代エジプトや日本でも古くから星座として認識されてきました。
古代メソポタミアでは農業の神ムンターズの姿。
古代エジプトでは死者の神オシリスの姿。
日本ではその形から「つづみ星」と呼ばれていました。
星の並びからオリオンの姿も想像しやすいと思いませんか?
片方の手にライオンの毛皮、もう一方は棍棒をふりあげている勇ましい姿です。
星座には想像力を限界まで(限界を超えて?)膨らませないと姿を思い浮かべないものもありますよね。
こいぬ座とか、りょうけん座とか。
たとえば、次の図がりょうけん座。
星がふたつだけ。
ふたつの星を結んでもただの直線ですって・・・いやぁ、ここから猟犬を想像するのはなかなかに厳しいと思いません?はっきりいって無理ゲーかと。
それにくらべて、オリオン座はとても連想しやすい星座だと思います。
オリオン座の神話〜やんちゃなオリオンと恋の結末
オリオン座の由来となった「オリオン」はギリシャ神話に登場する狩人の名前です。
海の神ポセイドンの子供で狩りの名人でした。
海の神の一族に生まれた超イケメンで、腕っぷしが強く気性が荒い性格。
さらに早熟かつ女好きでした。映画やドラマの主人公としての資質はバッチリです。
特技は海の上を歩くことです。
ギリシャ各地を放浪していたオリオンは、キオス島でメローペという女の子に一目惚れします。
メローペはキオスの王オイノピオーンの娘でした。
オリオンは結婚を申し込み、狩りの獲物を献上して猛アピールしますが、父娘はなかなか承諾しません。
時をおなじくして、凶暴なライオンがキオス島を荒らしていました。
そこで王はある企みを思いつきます。そのライオンを退治したら娘と結婚してもいいとオリオンに伝えたのです。
もちろん王はオリオンが負けると思っています。
「喰われてしまってよし!」
と。
しかし・・・、
オリオンはあっさりとライオンを殴り殺してしまいます。
そして倒したライオンの皮を王に献上しました。
さすがオリオン無双。
まさか勝つとは思っていなかったオイノピオーン王。
のらりくらりと催促をかわし、結婚を承諾しません。
約束を反故にされたオリオンは、ついに堪忍袋の緒が切れました。
やってはいけない行動にでます。
メローペを力づくで手に入れようとしたのです。
「うちの娘に何するんじゃ!ゴルァ!」
かわいい娘に狼藉をはたらくなど言語道断。
マジギレ状態。
激怒したオイノピオーンは、父である酒の神デュオニソスと組んでオリオンを泥酔させ、両目をえぐり取って海岸に捨てました。
さて、盲目になってしまったオリオン青年。
しばらくして鍛冶の神ヘパイストスのはからいで視力を取り戻します。
しかし、俺様最強の漢オリオンはこの程度では反省しません。
その後もオイノピオーンへの復讐を試みて空振りしたり、
曙の女神へオースと付き合ったり、
へオースと付き合っているのにプレアデス7姉妹を追いかけ回したりとやりたい放題。
やんちゃな名声もどんどん高まっていきます。
そしてついに、狩猟の女神アルテミスと出会い運命の恋に落ちます。
アルテミスの父は大神ゼウス。
いうまでもなくギリシャ神話世界の名家中の名家、華麗なる一族の出です。
二人は惹かれ合って結婚を誓い合いますが、今度はアルテミスの兄アポロンがそれを快く思いません。
「あんな粗暴な奴は我が一族にはふさわしくない」
というわけですね。
なんだかわかる気もします。
あるときアポロンは、オリオンが海から頭だけ出して歩いているのをみつけました。
そこで、アルテミスにこう言います。
「おまえは弓に自信があるというけど、あの小さな島に矢を命中させられるか?さすがに無理だろう?」と。
アルテミスはその挑発にあっさり乗ってしまいます。
だって狩猟の女神ですから。
兄の予想通りに見事命中させて、オリオンは死んでしまいました。
嘆き悲しんだアルテミスは、父ゼウスに頼んでオリオンを天にあげて星座にしてもらいました。
いまでもアルテミスは月の馬車に乗ってオリオンに会いにくそうです。
(シチリア島メッシーナにあるオリオンの噴水。ミケランジェロの弟子Giovanni Angelo Montorsoli作)
大爆発間近!?赤色超巨星ベテルギウス
ベテルギウスはオリオン座のα星で、橙色に輝く1等星です。
リゲルと並んでオリオン座でもっとも明るく輝く星です。
日本でも古くから「平家星(へいけぼし)」と呼ばれていました。
※α星のαはバイエル記号といって、ドイツのバイエルという人物が400年以上前につけた恒星の命名法です。星座ごとに明るい順に α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)…とつづきます。)
おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに「冬の大三角形」を形づくります。
ベテルギウスは「赤色超巨星(せきしょくちょうきょせい)」という星に分類されます。
字を読んでそのまま、赤くて超巨大な星で、中心部の直径はなんと太陽の650倍(!)
太陽と置き換えると火星までスッポリとはいってしまう超巨大サイズです。
周辺のガスや塵まで含めると木星くらいまで入ってしまうという・・・
あまりの大きさに想像が追いつきません。
ベテルギウスの寿命は終わりに近づいていて、明るくなったり暗くなったりと変動しています(半規則型変光星)。
ゲームなんかでありますよね?爆弾が爆発するまえに大きくなったり小さくなったりするのが。あのようなイメージです。
太陽よりはるかに巨大な星が、大きく膨らんだり縮んだりして不安定な状態になっていて、間もなく超新星爆発という大爆発をおこします。
なんだか近くにいたくはないですね〜。
もちろん、近くに行くことはできないのですが。
ちなみに、地球からベテルギウスは約600光年ほどはなれています。
ということは、いま目にしているベテルギウスの光は600年前のもの。
室町時代のベテルギウスの姿ということになります。
ということは、もしかしたら今頃すでに超新星爆発によってベテルギウスは消滅しているかもしれない(!)
現在のベテルギウスの姿は、600年後の未来にならないとわからないのですから。
超新星爆発がおきると中性子星が作られたり星雲が生まれたりします。
ちなみにおうし座のかに星雲は超新星爆発後の残骸です。
(参考元:NASA – Betelgeuse Star Braces for Crash with Strange Bar)
冬のダイヤモンド 青色超巨星リゲル
オリオンの右下(左足の部分)で青白く輝く1等星です。
日本では古くから「源氏星(げんじぼし)」と呼ばれています。
余談ですが、平家の旗印は「赤(紅)」。なので赤っぽくみえるベテルギウスは平家星。
源氏の旗印は「白」だから、青白くみえるリゲルが源氏星、というわけです。
ちなみに、紅白歌合戦や紅白リレーなどのルーツも源氏と平家の旗印が起源といわれています。
さて、リゲルはバイエル記号の分類ではβ星なのですが、平均視等級ではα星のベテルギウスよりも明るかったりします。
これはどういうことかというと、
不安定なベテルギウスは明るくなったり暗くなったりしています。
ベテルギウスが一番明るいときに限ればリゲルよりも明るい。
けれども、それ以外の時期はリゲルのほうが明るい。
平均してみるとリゲルのほうが明るい、という意味です。
リゲルは「青色超巨星(せいしょくちょうきょせい)」というタイプの星で、直径は太陽のだいたい50倍。
明るさはなんと4万倍(!)で、星空では金星の7倍もの明るさがあります。
おおいぬ座のシリウス、おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックス、こいぬ座のプロキオンとあわせて「冬のダイヤモンド」を形づくります。空気が澄んでいるときにぜひ探してみてください。美しいダイヤモンドが見つかりますよ。
星たちが生まれる場所 オリオン大星雲
オリオン大星雲周辺は星が形作られる領域で、たくさんの星雲があります。
オリオン大星雲は肉眼でも確認できる星雲のひとつです。
オリオン座の三つ星の下に、少し小さな三つ星が縦に並んでいるのがわかるでしょうか。
その真中がオリオン大星雲です。
オリオン大星雲の中には水素ガスがあつまっていて、若い星がたくさん含まれています。
(参考元:NASA – Messier 42 (The Orion Nebula))
幻想的すぎる 馬頭星雲
非常に幻想的なビジュアルが特徴の星雲です。まるでSFの世界。
もっともインパクトがある星雲のひとつではないでしょうか。
光り輝く星雲の中に馬の頭部のような暗黒星雲がみえます。
暗黒星雲は冷たいガスや塵が濃く集まっていて、内部では星が形成されていると推測されます。
背景の星や銀河の光が吸収されるため黒く見えます。
なお、暗黒星雲とは黒い雲のように見える星雲であって、シ○の暗黒卿とか○○帝国とか、フォースとかそういうのとは関係がありません。
馬頭星雲のすぐうしろに新しい星があって、その星が周囲の星雲を熱して輝かせています (散光星雲IC434)。
その光を暗い馬頭星雲が遮っているわけですね。
(参考元:NASA – Horsehead Nebula)
馬頭星雲は口径15cm〜20cm程度の望遠鏡で観測することができます。
心霊写真? 肉眼でみえないけど写真に写るバーナードループ
肉眼では見ることができないが写真には映る!
というまるで心霊写真のような不思議な星雲が「バーナードループ」です。
オリオン座全体が写真に入るように長時間露出で撮影すると、
赤く大きな光がオリオン座を取り巻いているのがわかります。
バーナードループという巨大な散光星雲で、ガスが集まっています。
アメリカの天文学者エドワード・エマーソン・バーナードが1895年に発見しました。
200万年前におきた超新星爆発の残骸と考えられています。
秋の風物詩 オリオン座流星群
毎年10月に観測できる流星群です。
10月の後半(年によって違う)の極大には1時間あたり10から20くらい(年によって違う)の流星をみることができます。「極大」とは流星もっとも多く観測できる時期のことです。
流星群の放射点がオリオン座の中にあります。
流星の数はそれほど多くはないですが、比較的明るくて観測しやすい流星群といえるでしょう。
だいたい午前2時ころから夜明け前くらいの観察がオススメ。
オリオン座流星群の母体は有名なハレー彗星です。
ハレー彗星の通り道には大量の塵が残されています。
その通り道を地球が横切るときに地球の大気にぶつかって燃えるのが流星として見えるのです。
なお水瓶座η流星群も同じくハレー彗星が母天体です。